dd50ee70’s blog

計算機科学を中心によしなしごとを

京都のK大学理学部がJABEEの審査を受けると

 JABEE関係は終了して新しいネタを考えていたところ、ふと思いついたJABEEパロディをupします。全てネタですから本当にしないでください。

 ありえないことですが京都のK大学理学部がJABEEの認定のため審査を受けたと仮定します。私は卒業生なのでJABEEの規定により審査員にはなれないのですが、ネタだから審査員になったとします。

 JABEE認定を受けるには学習・教育到達目標をまず設定しなければなりません。K大学理学部では

「講義をはじめとする既存の知識体系にとらわれることなく、自分の考えで真理を追求する態度を涵養する」

と言った目標が設定されます。

審査員(私)「この目標は教育プログラム(学部・学科)の伝統や修了生の活躍が想定される分野に配慮していますか」

K大学「修了生のY先生は原子核で陽子と中性子を結びつける力を説明するために、それまで誰も考えなかった新粒子を導入*1されたし、T先生は量子論に電磁気を取り入れる際、無限大の量が生じるのをくりこみ*2という全く新しい手法を導入して解消されました。そう言った伝統から当然の目標でしょう」

JABEEの能力観点(a)〜(i)とどう対応していますか」

「(e)デザイン能力と(g)自主的、継続的に学習する能力、そのものです」

「水準について言及がありませんが、どのくらいですか」

「そんな高度なものを要求したりしません。あくまで自由に自分で考える態度が身につけばよしとします」

「カリキュラム設計を見ると必修科目がありませんね」

「必修で学生を縛るのはこの学習・教育到達目標に反します。学生には幅広い科目の中から自分で必要なものを選び取ってもらいます」

「数学の科目を見ると週一コマ半年の講義で4単位になっています。これは文部科学省の基準の倍になっていますが、宜しいのですか」

「数学では講義時間の5倍の自学自習を想定しています。週2時間かける15週で30時間、その5倍の150時間を合わせて180時間、45時間の学習で1単位だから4単位になります。5倍の自学自習を想定していることは成績記録を見ればわかります」

「拝見します。むむ、このN先生の代数では受講者全員が不合格になっています。これは・・・」

「全員5倍の学習をしなかったということです。証明になっているでしょう」

「しかし、H先生やT先生(さっきとは違う先生)の講義では試験の代わりにレポートだけで、しかもレポート提出者は全員合格しています。これで講義目標が達成されているのですか」

「いろいろな話を聞いてレポートが書ければ良いという講義目標だからそれで良いのです」

「入門、概論、通論、集中講義科目がたくさんあり、どれも出席だけで合格になるようです。こんな空から降ってくるような単位だけ集めて卒業する学生がいると、学習・教育到達目標の達成をどうやって担保するのですか」

「そんな単位だけ取って卒業する学生は大学院には入れませんから問題ないです。本当の教育は大学院で、学部はオマケですから。学習・教育到達目標の達成は学生の自己申告です。まだ学習が不足と考える学生は留年しますから。この通り、留年生は大勢います」

「居心地がいいから、モラトリアムで留年しているのでは。とにかく、学部教育の審査ですから、学部の教育で学習・教育到達目標を達成していることを示してもらわないといけません。証明する根拠資料はありますか」

「本学は自由な校風のもと学生の主体性を重んじております。自己申告といえば自己申告でそれを学生に立証させるようなことはしません」

JABEEの基準と違うような。では総括報告文を読み上げます。

K大学理学部におかれましては長い伝統と実績に基づく優れた教育を実践しておられます。こりたびJABEE審査により教育点検をさせていただきました。その結果学習・教育到達目標を全ての修了生が達成していることを客観的に示す証拠を見出すことができませんでした。これは基準を満足しないことになり、誠に遺憾ながら認証不可の結論に至らざるをえません。

以上です」

H先生、N先生、T先生(後の方)については私の在学中の都市伝説をもとにしています。その他、必修がないとか、単位が空から降ってくるとかも私の在学中のことで、今どうなっているか知りません。あくまでネタですから追求しないように。

*1:陽子と中性子(陽子同士、中性子同士も)が仮想的中間子(主にπ中間子)を交換して互いに引力(強い核力)を生み出すという核力の理論

*2:電子がその負電荷により周りの空間に電場を作るとき、量子論によれば仮想的粒子対ができては消えることにより無限のエネルギーがあることになる。それを、電子がない場合(真空中)の仮想的粒子対の影響を電子がある場合から引くことにより、電子による正味の電磁場が計算できるというもの